「サンローラン」と「イヴ・サンローラン」。どちらも耳にする有名なブランド名ですが、名前が似ていて、混同してしまう方も多いかもしれません。この二つのブランドは元は同じルーツを持ちながら、現代では別のブランドです。
時代の流れとともに、両ブランドはそれぞれ別の進化を遂げ、現在は名称だけでなく、取り扱う商材やデザイン・ロゴまでもが変化しています。
本コラムでは、その背景にある歴史的経緯とデザインがたどった経緯を紐解きながら、「サンローラン」と「イヴ・サンローラン」の違いを解説いたします。
- 目次
- サンローランとイヴ・サンローランとは? — 基本を分かりやすく解説
- サンローランが手掛けるファッションの特徴と魅力
- リブランディングの戦略と創業者の遺産との関係
- サンローランとイヴ・サンローランの代表的な商品
- サンローランとイヴ・サンローランの見分け方と選び方
- サンローランに関するよくある質問 (Q&A)
- まとめ
サンローランとイヴ・サンローランとは? — 基本を分かりやすく解説
1961年12月4日、イヴ・サン=ローラン(Yves Saint Laurent)と実業家ピエール・ベルジェ(Pierre Bergé)はファッションメゾン「イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)」を設立しました。創業当初はオートクチュールを中心に展開し、1966年にプレタポルテ(高級既製服)ライン「イヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュ(Yves Saint Laurent Rive Gauche)」を発表しました。
これは「ファッションの民主化」と評価され、ファッション史に大きな転機をもたらしました。
サン=ローランは1936年8月1日、当時フランス領だったアルジェリア・オラン(Oran, Algeria)に生まれました。21歳でクリスチャン・ディオール(Christian Dior)の後継として主任デザイナーに就任し、1958年春夏に「トラペーズライン(Trapeze Line)」を発表。柔らかな曲線と構築的なフォルムで注目を集めました。
その後独立し、自身のメゾンで「ル・スモーキング(Le Smoking)」などの名作を生み出します。優雅さと自由を両立させたスタイルは、時代の女性像を変えたといわれています。
2002年1月、イヴ・サン=ローランは引退を発表。1月22日の最終ショーをもってオートクチュール部門は幕を閉じました。
2012年、デザイナーのエディ・スリマン(Hedi Slimane)がクリエイティブディレクターに就任し、ブランド再構築の一環として、プレタポルテラインを「サンローラン・パリ(Saint Laurent Paris)」に改称しました。このサンローラン・パリ(Saint Laurent Paris)が後の「サンローラン」となります。
この2012年が「サンローラン」と「イヴ・サンローラン」を名称を分けたきっかけと言っても過言ではありません。
参考情報
- イヴ・サンローラン美術館パリ(Musée Yves Saint Laurent Paris)によると、メゾンは1961年12月4日にパリのスポンティーニ通り(Avenue Marceau)30bisに開設され、最初のガウンには「00001」のラベルが付けられました。
- 出典: Musée Yves Saint Laurent Paris
サンローランが手掛けるファッションの特徴と魅力
サンローランの魅力は、伝統と革新を行き来するデザイン哲学にあります。創業者が打ち立てた「ル・スモーキング(Le Smoking、女性用タキシード)」は、当初は賛否を呼びましたが、今では女性の自立を象徴するアイコンの一つと言われています。
現代のサンローランは、モノトーンやシャープなシルエットを基調とした洗練されたスタイルが特徴です。エディ・スリマン(Hedi Slimane)が導入したライダースジャケットやスキニーデニムは、ロックテイストと都会的感性を融合させた代表作として知られています。その美学は、現クリエイティブディレクターのアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)にも継承されています。
サンローランのリブランディングの戦略と創業者の遺産との関係
サンローラン・パリ(Saint Laurent Paris)の2012年のリブランディングは、単なる名称変更ではありません。エディ・スリマン(Hedi Slimane)は、1966年の「サンローラン リヴ・ゴーシュ(Rive Gauche)」の精神を再解釈し、「イヴ」の名を外しました。若い世代にも響く、現代的でジェンダーニュートラルなブランド像を打ち出したのです。
当時、「Ain't Laurent without Yves(イヴなくしてローランなし)」というスローガンが話題となりました。しかし、共同創業者ピエール・ベルジェ(Pierre Bergé)がスリマンの方向性を公に支持したことで、ブランドの新体制は確立されます。2016年にはデザイナーのアンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)が後任に就任し、スリマン期の要素を継承しながら「YSL」モノグラムを再び象徴的に使用しました。こうして、「SAINT LAURENT」ロゴと「YSL」カサンドラロゴ(Cassandre Logo・グラフィックデザイナーのカッサンドルがデザインしたことで有名なYSLロゴ)を併用するデュアルロゴ戦略が完成します。
参考情報
- ケリンググループ(Kering・サンローランを所有するフランスの高級ブランドグループ)の公式発表によると、アンソニー・ヴァカレロ(Anthony Vaccarello)は2016年4月3日にイヴ・サンローランのクリエイティブディレクターに任命されました。
- 出典: Kering
サンローランとイヴ・サンローランの代表的な商品
サンローランとイヴ・サンローランは、それぞれ異なるカテゴリーで代表的な商品を展開しています。ここでは、両ブランドを象徴するアイテムをいくつかご紹介します。
サンローラン(Saint Laurent)
ケイト(Kate)
スーパーモデルのケイト・モス(Kate Moss)にちなんで名付けられた、サンローランで最も人気のあるバッグです。エレガントなエンベロープクラッチバッグとして、長年多くの人に愛され続けています。
サック・ド・ジュール(Sac De Jour)
構造的なフォルムが特徴のレザートートバッグ。洗練されたデザインと実用性を兼ね備えた、サンローランの定番アイテムです。
Le 5 à 7
フランス語で「5時から7時まで」を意味する名前を持つ、シネマティッククラシックバッグ。エレガントで都会的な印象を与えます。
ルル(Loulou)
キルティングデザインが特徴的なバッグ。柔らかなフォルムと上質なレザーで、カジュアルからフォーマルまで幅広く活躍します。
モノグラム(Monogram)
YSLロゴの金具がアイコニックな、サンローランの定番バッグ。シンプルなデザインで毎日使っても飽きず、ヘビーローテーションに最適です。
イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)
リブレ(Libre)
フレッシュなフローラルラベンダーの香りが特徴の香水。軽やかで飾らない自由を表現し、YSLフレグランスのベストセラーとなっています。
モン パリ(Mon Paris)
フェミニンで可愛らしい印象の香水。パリの恋をテーマにした、人気の定番シリーズです。
オピウム(Opium)/ ブラック オピウム(Black Opium)
「オピウム」は麻薬のように魅惑的な香りで、誰もを虜にする個性的な香水。2014年に発表された「ブラック オピウム」は、現代的にアレンジされた人気シリーズです。
ルージュ ピュールクチュール(Rouge Pur Couture)
YSL Beautyを代表するリップスティック。ラグジュアリーなリップシェードと発色の良さで、メイクアップの定番アイテムとなっています。
トゥーシュ エクラ(Touche Éclat)
ルミナスコンプレクション製品として知られる、アイコニックなメイクアップアイテム。光を味方につけた輝く肌を演出します。
サンローランとイヴ・サンローランの見分け方と選び方
現在は、アパレルやバッグはサンローラン、コスメや香水はイヴ・サンローランという棲み分けがされています。ロゴでも違いが分かります。
バッグの金具などに刻まれた「YSL」モノグラム
衣類タグや店舗に掲げられる「SAINT LAURENT PARIS」
香水・化粧品パッケージに記載された「Yves Saint Laurent」
また、時期によって表記も変化しています。1999〜2004年はトム・フォード(Tom Ford、アメリカのデザイナー)期、2012〜2016年はスリマン期、2016年以降はヴァカレロ期と整理できます。
ヴィンテージを選ぶ際は、タグやフォント、素材の質感を確認することが大切です。本物は刻印の間隔が均一で、レザーの手触りにも一貫した上質さがあります。
サンローランに関するよくある質問 (Q&A)
Q1. サンローランとイヴ・サンローランは別ブランドですか?
同じルーツを持つブランドですが、現在は運営母体が異なる別のブランドといって良いでしょう。
Q2. ヴィンテージの価値は?
創業者期やスリマン期の代表作などが、コレクターズアイテムとして注目されています。
Q3. サンローランの商品や、イブサンローランの商品は買取可能ですか?
まとめ
サンローランとイヴ・サンローランは、同じメゾンから生まれた別のブランドです。
1961年の創業から2012年の再出発を経て、ファッションとコスメ(香水)という二つの軸で進化を続けています。
ロゴやデザインの変遷を知ることで、ブランドの深みをより実感できるでしょう。
参考文献
1. Musée Yves Saint Laurent Paris - イヴ・サンローラン美術館パリ公式サイト
メゾンの設立、創業者の生涯と業績
https://museeyslparis.com/
2. Saint Laurent公式サイト - ブランドヘリテージ
ブランドの歴史と主要なマイルストーン
https://www.ysl.com/en-us/collections/heritage
3. Kering - ケリンググループ公式サイト
クリエイティブディレクターの就任情報、ブランドの歴史
https://www.kering.com/en/houses/couture-and-leather-goods/saint-laurent/
4. 国立国会図書館レファレンス - イヴ・サンローランの経歴について
https://crd.ndl.go.jp/reference/entry/index.php?id=1000232099




