着物のコラム

高い着物・帯の見分け方のポイントは?柄、生地の種類や違いをご紹介


目次
帯の種類は何種類ある?「格」の観点から見た帯の違い
高い帯はここで使いたい!価値のある帯の使うシーンについて
価値がある帯、高い帯の特徴とは?高値で取引される帯の種類をご紹介
高値で取引される帯の織りや染め、刺繍について
価格や見た目の差は? 手染めと機械染めの違いはある?
まとめ

帯の種類は何種類ある?「格」の観点から見た帯の違い

日本人なら一度は着物姿に憧れを抱いたことがあるのではないでしょうか。「着物一枚に帯三本」と言われる程、帯合わせによって着姿の印象は変わります。しかし、身近に着物や帯に詳しい人がいなければ、帯の格やどのようなシーンに合わせるものなのか悩みますよね。とくに正面から見た場合、どれも同じように見えてしまいます。また、着物を着用するシーンで最も気になるのは何と言っても「格」でしょう。「その場にそぐわない装いで恥をかきたくない」という気持ちは誰しも持っているものです。

帯に関しては、フォーマルで使用する帯なのか、カジュアルシーンで使用する帯なのかを知っていれば大きな心配は必要ありません。現在、フォーマルシーンで活用されているのは袋帯、カジュアルシーンで活用されているのは名古屋帯と半幅帯です。「帯の格」の観点から言えば袋帯が格上ですが、その帯に使われている技術や伝統工芸、作家もの、帯素材の希少性などによって帯の価値は変わります。
お手持ちの帯はどのようなシーンで活用する帯なのか、帯の価値についてご紹介いたします。

高い帯はここで使いたい!価値のある帯の使うシーンについて

帯は、種類によって用途が異なりますが、高い帯はどのようなシーンで着用すれば良いのでしょうか?
帯の形状を見て見分ける方法が最も簡単です。袋帯・名古屋帯・半幅帯の3種類の帯をご紹介します。

袋帯…フォーマル向き、織りの帯

袋帯は、幅約31㎝・長さ420㎝前後の長い帯です。
フォーマルシーンで用いられる「二重太鼓」という結び方には、長さが必要なため、袋帯は他の種類帯より長く作られています。日本人は縁起を大切にしますが、二重太鼓はお祝いの席で「おめでたいことが重なりますよう」という意味を込めてお太鼓の部分に帯が二重になるような結び方です。
金糸銀糸がふんだんに使われている袋帯は、結婚式や入学・卒業などの式典やお祝いシーンで着用しましょう。ただし、袋帯の中にも金糸や銀糸を使わない趣味性の高いものもあるので、その場合にはオシャレ着としてプライベートに着用するのが好ましいです。

名古屋帯…オシャレ着向き

名古屋帯は、幅約30㎝、長さ360㎝前後の帯で、袋帯に比べると短いです。
先述した二重太鼓ではなく、一重太鼓に結ぶのが一般的で美術鑑賞、歌舞伎鑑賞、ちょっとしたお出かけや食事会などのシーンで着用します。

半幅帯…カジュアル・普段着向き

半幅帯は、主に浴衣や綿、ウールの着物に合わせる帯です。
袋帯の半分の幅であることから半幅帯の名が付きました。長さは様々で名古屋帯と同じくらいの3m60㎝程度のものから、現在では4m40㎝ほどの長いものまであります。名古屋帯よりも更にカジュアルなシーンで着用されます。

価値がある帯、高い帯の特徴とは?高値で取引される帯の種類をご紹介

価値がある帯とはどのような帯でしょうか?価値はその人により異なるため順列をつけることは出来ませんが、一般的には、「有名作家が手掛けたもの」「伝統的工芸品」「有名な技法」「幅広く知られるデザイン」「帯を構成する材料等が希少」といった帯が価値が高いと言われています。
また、それらは複合的に組み合わされることも多いため、下記では、代表的な技法や有名作家の一部事例をご紹介します。

辻が花(技法) 有名作家 久保田一竹(くぼたいっちく) 

「辻が花」とは、様々な絞りの技法を使って染色される部分と色が入らない部分をつくり、模様としてデザインしたものです。
基本的には絞りの技術ですが、筆で絵を入れたり、刺繍を施すなどの技術を組み合わせて彩り豊かに表現した作品が多いです。辻が花の技術は江戸時代以降自然消滅し、"幻の染め"と呼ばれていましたが、それを独自に復刻させ、世界的に評価されたのが、久保田一竹です。彼の作品は光のシンフォニーと言われる程、色の移ろいが繊細で美しく、海外でも高く評価され、市場でも高値で取引されます。

芭蕉布(植物の繊維を使った織物) 有名作家 平良敏子(たいらとしこ)人間国宝

「芭蕉布(ばしょうふ)」とは、芭蕉というバナナに似た植物由来の糸で織りあげた布のことです。
着物一着分を作るのに半年の工程がかかるとも言われ、市場に出回る数が少なく高値で取り扱われます。平良敏子は、途絶えかかった芭蕉布の技術を確かな工芸として確立し、後継者の育成にも努め、芭蕉布に生涯を捧げた染色作家で、後に人間国宝である重要無形文化財「芭蕉布」保持者として認定されます。芭蕉布はその自然な風合いや素朴な美しさに親しみが湧き、飽きがこず、愛好家には幻の一枚として取り扱われています。夏の着物生地や帯として、非常に価値が高いものです。

龍村平蔵(たつむらへいぞう) 初代は紫綬褒章受章 龍村美術織物

「龍村美術織物」は、着物愛好家にとっては憧れです。有名な帯の他にも、タペストリーやシート、緞帳(どんちょう)など様々なジャンルの織物を手掛けています。初代龍村平蔵は織物の技術者として優れ、30代の頃に多くの特許を取得しました。後に古代裂(こだいぎれ)の研究に従事。復元の第一人者と呼ばれており、龍村平蔵の名は個人の名であると共に現在四代目まで襲名されています。龍村美術織物の帯は古代裂(こだいぎれ)にデザインされていた、花紋や唐草、唐獅子などを配した正倉院文様が多くみられ、日本文化の中に仏教的要素や異国情緒が漂うような柄が特徴的です。

北村武資(きたむらたけし) 羅、経錦で重要無形文化財(いわゆる人間国宝)

古代中国で使われていた技法、「羅(ら)」を復元し、更に現代風に発展させ「羅」「経錦(たてにしき)」の二領域で人間国宝となった人物。羅は織の中に透かしが入ったような織り上がりで、経錦は細い経糸で色の異なる糸を数本使い、表に出す糸で柄を織り出す技術です。現代では緯糸による柄出しが多い中、経糸による技術は非常に希。また、経錦は表の柄とは色違いの柄が裏面に出ることになり、両面の美しさを持つ珍しいものです。糸の重なりによる色の強度、背面に使われる透かしのコントラストが美しい帯で高値で取引されます。

高値で取引される帯の織りや染め、刺繍について

帯に使われる織りや染めは複合的に組み合わされ、一本の帯となります。また、織りや染めと併用して「刺繍」を加えることによりデザインが洗練される為、刺繍を施した帯も多くあります。以下、着物や帯に詳しくない方でも分かる代表的な刺繍の特徴についても触れておきます。

相良(さがら)刺繍…玉を重ねるようにして模様を描くことから玉縫いとも呼ばれる技法。金糸銀糸などを使わず、色糸のみで刺繍するため、落ち着きがあり、古風な印象を与えます。表面に玉をつくるため、表に出る糸の分量が多く、近づくと玉が並んでいる様子が特徴的で、見分けがつきやすいです。立体的でありながら糸の引っかかりがなく、最も丈夫な刺繍と呼ばれています。

汕頭(スワトウ)刺繍…レース生地に規則的な空間があるように縫う技法。帯や着物の経糸と緯糸の隙間に糸を通して空間を広げることで模様にしていきます。部分的に規則的な空間を加えることで帯地の奥深さを出したり、ニュアンスの違いをデザインとして取り入れたり、模様に表情や緩急がつきます。他の刺繍と組み合わせて使われることが多い刺繍です。

蘇州刺繍・・・中国刺繍の一種で、髪の毛よりも細い絹糸を使用します。糸が細い為、生地表面が波立たず、非常になめらかな仕上がりとなります。裏表の両面刺繍で色も豊富。金糸銀糸が使われていることが多く、全体的に豪華絢爛な印象を与えます。絹糸ならではの光沢、上品さも加わり、艶感が抜群で、動物柄などの場合には、その毛並みはまるで本物のような精巧さです。

価格や見た目の差は? 手染めと機械染めの違いはある?

有名作家の作品の場合、その知名度や技術の確かさが帯の価値として挙げられます。また、作家の作品ということは、当然手仕事であり、それだけ人の労力と技術が詰め込まれているものになります。

一方、消費者側からするとその技術は素晴らしいものの、価格帯として手が届きにくい、生産数が少なく手に入りにくいものが多いため、広く消費者に届くよう機械による効率化が生まれました。これは購入する際にも売却する際にも同じことで、表にすると以下のようになります。

入手する際の価格 売却する際の価格
手仕事 高値 高値
機械仕事 お手頃 お手頃

九寸名古屋帯と八寸名古屋帯

帯で染めの技術が最も使われるのは九寸名古屋帯です。九寸名古屋帯は着物生地に近い柔らかい帯地が多く、そこに筆で絵付けをしたり、型染めで柄を表現します。

「友禅」染めを例に挙げると、その工程は、仮絵羽にした着物に模様を描き、彩色の際に色が混じりあわないように糊を使って防染します。グラデーションも含め、彩色が多いものでは100色以上の色を使うと言われ、一枚の絵を描くように色付けをした後、更にその部分を糊で伏せて全体の地染めを行います。非常に細かい作業で、熟練の技になるまでに何年もの歳月がかかります。人の手で彩色されたものは一点ものになる為、機械染めにはない奥深さや繊細さ、ひとの温かみなどが含まれた価値が生まれます。

一方、現代では機械染めのプリント技術も進み、細かい模様や色を表現しやすくなりました。機械染めでは化学染料を使った彩度の強い色を表現しやすく、相性の良い生地としてはポリエステルが挙げられます。値段がお手頃な反面、売却の際には価値はあまりつかない場合が多いです。

また、手染めとプリントを見分けるには、生地の裏を見ると分かりやすいです。表と同じ色が入っていれば手染め、裏に色が通っていなければプリントということが分かります。

まとめ

帯の種類や活用シーン、帯の格や帯を作るための様々な技術(手染めや機械染め)について触れてきましたがいかがでしたでしょうか。
今回のコラムで触れた内容は帯のほんの一部ですが、お手持ちの帯がどんな帯なのか?どういったシーンで活用すればよいのか?など、この記事が参考になれば幸いです。
帯は専門的な知識がないと、なかなか価値の判断は難しいものです。
親戚や先祖から受け継いだ帯が貴重なものだったりするケースもあると思います。
もしかしたら、今までに知らなかった技術や伝統的工芸が施された帯がご自宅に保管されているかもしれません。

ご自宅にある帯や着物の査定、売却をお考えの際には、是非、専門知識のあるリサイクル着物のプロにご相談ください。

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