着物のコラム

たとう紙って何?着物に関する知識


目次
たとう紙って何?
地域により異なるたとう紙の呼ばれ方
着物の保管にはたとう紙が必要?たとう紙を使うメリット3つ
たとう紙を用途別に使いこなす方法
たとう紙の使い方とは?
たとう紙を使う際の注意点
たとう紙を交換すべきタイミングはいつ?
まとめ

たとう紙って何?

たとう紙とは一言でいうと、着物を包む紙のことです。元々は貴族のような上流階級の人々が着物を贈り合う際に、価値のある大切なものを包むという意味で紙に包んでいたことが由来とされています。その後、呉服屋が仕立て上がった着物をお客さまに渡す際に同様に包むようになったために、より一般的に広まっていきました。初めは梱包のために使用されていたものでしたが、着物や帯を梱包することでチリやホコリから守れること、そのまま保管することでシワの防止や湿気、カビ対策として有効なことから保管時に使用することで多くのメリットがあったことから、保管の際に使用するものになりました。

着物が日常着だった時代は着物や帯を仕立てる仕事は女性が行う家の仕事でした。後に和服と洋服が混在する時代が訪れ、呉服屋が仕立てまで行うようになり、大正時代頃からたとう紙が普及し、昭和に定着していったようです。

地域により異なるたとう紙の呼ばれ方

たとう紙は地方や用途によって漢字の書き方や読み方も異なります。読み方としては「たとうし」、「たとうがみ」、「たとうかみ」、「たたみがみ」などがあり、漢字表記としては「畳紙」、「帖紙」、「多当紙」などがあります。また近畿地方では「文庫紙」や「キモノ紙」と呼ばれることが多く、京都ではたとう紙というと着物を着替える時に下に敷く「衣裳敷」のことを意味しています。

着物は本来非常に湿気がこもりやすく、日本は湿気の多い気候であることもありカビが発生してしまうことが多いものでした。たとう紙は通気性や吸湿性に優れているため、包んで保管することによって不要な湿気を取り除いてくれ、着物を守ってくれる役割を果たします。意外にも、収納や取り出しの際に着物同士が重なることからくる折れやシワが多いのですが、それを軽減してくれる役割もあります。また、使用される紙の種類や柄、紋様などは購入する場所や銘柄によって異なりますので、たとう紙はただ保管するためのものではなく、その着物の価値を証明することが出来るものでもあります。

着物の保管にはたとう紙が必要?たとう紙を使うメリット3つ

たとう紙は、時代と共に着物や帯の梱包から保管へと大きく変わっていきました。たとう紙を保管に使用することで「防湿・防カビ効果」「チリ・ホコリ対策」「シワを防ぐ」という3つのメリットが得られます。どのような点で有効なのか?という視点からひとつずつ順にご紹介します。

防湿・防カビ効果

「長期間の保管で大切な着物や帯にカビが生えてしまった。」という話をよく聞きます。紙の原料は木であるため、たとう紙には湿気を吸ってくれるという大きな特徴があります。吸湿性は、ビニールやプラスチック製のものにはありません。カビが発生する条件は「温度」「湿度」「栄養源」の3つが揃った時です。この条件のうち、湿度を抑えることで、カビの発生率を低くする効果があります。

チリ・ホコリ対策

チリ・ホコリの中で最も多いのが繊維ボコリと言われる種類です。衣服、布団、カーテン、絨毯から出る小さな繊維が見えないホコリとなり、日常生活で発生し空気中に舞います。着物や帯を一枚ずつたとう紙に包むことにより、チリやホコリから守ってくれる役割を果たします。

シワを防ぐ

着物を畳み収納する際に袖が折れてシワになってしまった経験はありませんか?着物を畳む際に最も使われる「本畳み」では、右袖が外側に向き、他の部分と比べて動きやすくシワになりやすい箇所となっています。また、着物同士を何枚も重ねた時に畳んだ際の折り目がズレてしまうこともあります。たとう紙に包むことで着物同士の摩擦や偏りを軽減し、収納の際に引き出しの中でつくシワを防ぐことが出来ます。

たとう紙を用途別に使いこなす方法

たとう紙には多くの種類があります。大きさや材質を理解することで、より効率の良い収納や探しやすさ、お手入れや交換の参考になれば幸いです。

たとう紙の種類とサイズ

着物用(二つ折り) 約83cm×約36cm 身丈を半分に畳み保管するのに最適
着物用長尺(二つ折り) 約87cm×約36cm 身丈が長い着物を半分に畳み保管するのに最適
着物用(三つ折り) 約64cm×約36cm 身丈を1/3に畳み保管するのに最適。羽織や袴の保管用にも
帯用 約56cm×約36cm 帯の保管に最適

最も一般的なたとう紙のサイズは約83cm×約36cmです。また、着物の他に着物の上に羽織る道行、道中着、羽織をはじめ、帯や袴の保管にも使われ、ご自身のサイズや畳み方により、最適なたとう紙を選ぶようになります。

女性で身長が165㎝以上の方は身丈を半分にしても一般的なきもの用たとう紙に収まらないことがあります。その場合には長尺のたとう紙を利用されると良いでしょう。

たとう紙の材質とは?和紙と洋紙の違い

たとう紙の材質は木です。原料となる木は様々ですが、日本で昔から使われていた紙を和紙と呼び、障子紙や半紙に使われていました。時代が進み、明治に入ると木材パルプ(木材を細かくしたもの)を原料にした紙が普及し、それを洋紙と呼んでいます。

和紙とは?

和紙に使われる木は楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などで、洋紙に比べると繊維が長いこと、凹凸があること、色がやや黄味がかったものが多いです。雲竜紙(うんりゅうし)と呼ばれる紙は、たとう紙によく用いられており、長い繊維が雲のようなデザインとして出るように漉(す)いたものになります。

洋紙とは?

洋紙は木材パルプと呼ばれる細かい繊維から生成されるため、和紙に比べると表面が均一でつるりとしており、手触りで判断することが出来ます。その特徴からインクがにじみにくく、印刷に適しています。和紙に比べると原材料が安価で、機械化が進んでいるため、大量生産に向いています。

保管に最適なのは和紙と洋紙どちらのたとう紙?

たとう紙として販売されているものには和紙、洋紙の両方がありますが、どのような基準で選ぶのが良いでしょう?

比較的長期保管(2~3年)で防カビを目的とするのであれば、洋紙よりも和紙が優れています。

和紙には厚みや凹凸があり、程よく空気を通しながら湿気を吸収してくれます。大切な着物や帯が傷んでしまう原因にカビがありますが、先述したように湿気と大きく関わっています。吸湿性において和紙のたとう紙は洋紙と比べて勝っています。更にたとう紙としての寿命も洋紙に比べると長いと言われています。

では、洋紙のたとう紙はどのように活用すれば良いでしょうか?洋紙のたとう紙は和紙に比べると表面がツルツルしており、厚みがないこと、安価であることが挙げられます。クリーニングから返ってきた着物などに使用されています。頻繁に着物を着る方で収納に厚みを持たせたくない方や毎年たとう紙を交換する方、ホコリ、チリ除けの目的を重視される方は、価格の面からも洋紙を使うという方法があります。

たとう紙についている便利な窓と注意点

たとう紙には中の着物や帯が見えるように窓が付いているものがあります。着物や帯を探すのに窓から中身が見えるのは大変便利なことです。但し、この便利な窓も保管環境によっては注意しなくてはならない点があります。

絹は直射日光や蛍光灯から出る紫外線に長く触れると色が黄色に変わっていきます。箪笥など、遮光されている場所で保管する場合にはそれ程気にすることはありませんが、オープンラックなどに収納している場合は窓の部分だけ光に当たるので注意しましょう。黄変については絹が顕著ですが、他の素材の着物も紫外線によるヤケは起きます。

ご自宅で出来る対応策として、市販のLEDライトはほとんど紫外線を出さないと言われていますので、ライトを交換するという方法があります。

たとう紙の柄

たとう紙には無地のもの、文字が入ったもの、植物や平安貴族などの絵柄が入ったものなどがあります。ご家庭で交換される際にはお好みの柄を選んでいただくのが良いでしょう。但し、着物や帯を呉服店から購入した場合には、購入場所の証明にもなりますので、将来的に売却をお考えの方は購入店のたとう紙も保管しておくと良いでしょう。

たとう紙の使い方とは?

たとう紙は着物や帯を中心に置き、左右、上下から包むようなつくりになっています。全てを開くと十字のような形になっており、着物や帯を畳んだ上でたとう紙を開いた中心に置き、最初に左右を、次に上下を包んでいきます。

左右の紙は重なることはなく、紐を結ぶことで中の着物や帯がズレないようにする役割があります。窓が付いている場合にはこの部分が見えるようになっています。

上下の紙は重なり、手前側で2か所結べるようになっています。この紐の結び方は蝶結びで大丈夫です。たとう紙を広げた時に直角になっている部分に三角形の形で紙が4か所付いており、他よりも濃い色になっている場合が多いです。これは、たとう紙を頑丈にするためや隙間からホコリが侵入するのを防ぐために付いています。

たとう紙を広げた時に薄紙が付属したたとう紙もあります。その場合には薄紙も一緒に広げて着物や帯を中に仕舞いましょう。着物のたたみ方は本畳みが基本ですが、個人やご家庭の収納スペースに合った畳み方で、サイズを選ぶと良いでしょう。

たとう紙を使う際の注意点

これまでたとう紙のサイズや用途をご紹介してきました。最後にたとう紙を使う際の注意点をまとめてご紹介します。

一枚のたとう紙に入れるのは一枚のみ

一枚の着物に対して、長襦袢や帯をセットで誂えた場合など、まとめて保管しておきたくなりますが、一枚のたとう紙には一枚のみ保管しましょう。一枚ずつ保管することで、片方に出たトラブルがもう片方にうつってしまう事態を防げます。

糊が虫を引き寄せることがある?

着物の保管について調べたことがある方は、「たとう紙に使われている糊が虫を引き寄せてしまう」という話を聞いたことがあるかもしれません。

虫は着物の大敵ですから、非常に気になる部分ですが、たとう紙を1~2年周期で定期的に交換している場合にはほとんど影響がないと言われています。

しかしながら、5年や10年に渡る長期保管では、同じ場所に仕舞いっぱなしになっていることが多く、空気の循環がほとんどありません。その為、温度、湿気、栄養源の3点が揃いカビが発生したり、虫が好む環境を生んでしまいます。

以上のことから糊についての心配の最大の対応策としては、定期的な空気の入れ替え、たとう紙の交換が必須と言えるでしょう。

たとう紙を交換すべきタイミングはいつ?

たとう紙には交換すべきタイミングがあります。一般的には1~2年で交換すると良いと言われています。

しかし、その期間を待たずとも、収納環境により変色している場合や汚れがひどい場合には大切な着物や帯を痛めてしまう原因になりますので、すぐに交換するのが良いでしょう。

定期的な交換を行うには時期を決めて行うことが欠かせません。春や秋の湿度が低い時期に虫干しを行い、同時にたとう紙も確認して古くなったものは新しくするのが理想的です。3日間晴れの日が続いた後に虫干しをするのが理想的と言われています。

春や秋の交換時期はそれぞれだと思いますが、毎年交換する、奇数年や偶数年に交換する、ひな人形を出すタイミングで交換するなど、毎年の恒例行事と結び付けてご家庭毎の目安をつくっておくことで忘れずに交換することができます。

定期的に交換する上で、古いたとう紙がどれか分からなくなってしまうことも多いですが、一目でわかる工夫があります。たとう紙に交換した日付を記載しておくと確実です。たとう紙を新しくする際、着物や帯をたとう紙に収める前にたとう紙の表面に日付を記載しておけば一目で交換期限を認識することが出来ます。

まとめ

たとう紙は着物を保管する際に着物を守り、状態よく保つために欠かせないものです。使用することによるメリットは非常に多いですが、ただ着物を包んで保管しておけば良いというものでもありません。

使用期限を守り、正しい方法で使用することによって、本来の役割や効果をきちんと発揮させることができます。着物の保管状態を良くすることによって、着物の買取査定金額が上がりますので、たとう紙を上手に利用していただければと思います。

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