着物のコラム

龍村美術織物の帯や着物の特徴と買取相場について

“美術織物”という新たな芸術分野を確立した「龍村美術織物」は、初代龍村平蔵から現在の四代龍村平蔵へと引き継がれている、伝統的な織物ブランドです。

龍村平蔵は日本を代表する染織研究家で、初代龍村平蔵は経糸と緯糸で構成される織物に当時は確立されていなかった数多くの新しい技法を生み出しました。法隆寺や正倉院の伝統的な織物の復元研究に尽力しながら、織物を独特の陰影をたたえた立体の造形として捉えて、数多くの作品を生み出した作家です。

龍村美術織物の帯や着物は、リサイクル着物業界でも高く評価され、高額査定となる帯・着物があります。今回は、龍村美術織物の特徴と共に、龍村美術織物の買取相場などをご紹介します。龍村美術織物に関心のある方や、着る機会のない龍村美術織物をお持ちで着物買取を検討されている方は、ぜひお役立てください。

目次
龍村美術織物とは
龍村美術織物の買取相場と高額査定のポイント
まとめ

龍村美術織物とは

龍村美術織物は、着物愛好家の間でも「織物の美しさ」が表現されていることで知られています。独自の美的感覚から生まれる大胆かつ緻密なデザインを、高い織物技術によって再現できることが、龍村平蔵の作品の特徴です。初代龍村平蔵は、従来の帯にはなかった文様の立体感と色彩を糸の性質を用いて現しました。「高浪織」によって帯に立体感と彩りを加え、「機械によるゴブラン織」では、印刷の原理を応用して写実的な文様を織物で再現し、注目を集めました。

織物に対する美的表現に加えて、龍村美術織物は大きく分けて「独創性」「復元力」「高品質」という三点の特徴も挙げられます。明治時代に初代龍村平蔵が、当時はまだなかった織物技術を確立したことで「独創性」が打ち出されました。また、古代織物の研究から得た原料・染色料の知識や、古代の染色技法を取り入れた技術も、龍村作品がもつ特徴として高く評価されています。

そして、龍村美術織物の二つ目の特徴に、「復元力」があります。初代龍村平蔵が正倉院の宝物裂、法隆寺裂などの裂復元に着手したことから、龍村の復元力は世に知られることとなりました。織物の復元には模倣する力だけでなく、細やかな文様などを再現する技術が求められ、その確かな復元力も龍村美術織物が評価される理由の一つとなっています。

三つ目の特徴である「高品質」は、龍村美術織物が帯や着物以外にも様々な場所に使われていることで証明されています。龍村織物の製品は、独創的な色合いや立体的なデザインに加えて、時間の経過で色褪せにくいことでも知られています。美しいデザインを長く保てる龍村美術織物は、帯や着物をはじめ、舞台の緞帳やタペストリー、飛行機や新幹線のシートなどの人の手が触れる場所でも使われており、織物としての品質の高さも評価されています。

美術織物を確立した龍村平蔵

現代でも高く評価される龍村美術織物の礎を築いたのが、初代龍村平蔵でした。初代龍村平蔵は、明治・大正の時代に生き、織物と染織分野に革新をもたらした第一人者です。1876年に大阪で生まれ、呉服の販売から商売を始めた後、織物の世界に入り、染織にも傾倒していきます。10代で織元として独立し、30代で「高浪織」や「纐纈(こうけち)織」といった織物の特許を取得して、その名が広く知られることになりました。

初代龍村平蔵の織物に対する考え方、確かな織物技術を組み合わせて作られた数々の作品は、交流のあった芥川龍之介や、昭和天皇にまで認められました。1956年に初代龍村平蔵は、染織工芸界の新しい可能性を切り開いた数々の功績に対して、日本芸術院恩賜賞を受賞。1962年に86歳で亡くなるまで、龍村美術織物の地位を確立して、その礎は二代以降の龍村平蔵に受け継がれています。

世界中で評価されている龍村美術織物

龍村美術織物は、国内から国外まで高く評価されています。数々の名物裂の復元によって国内での評価を得ていた初代龍村平蔵は、昭和に入ると国外への作品出典も積極的に行いました。ベルリン第1回世界工業博覧会では、出品した丸帯「威毛錦」が金賞を受賞。その後、アメリカの十数の都市でも復元した古代裂の複製を輸出して巡回展を行い、日本の美術織物の普及に貢献しました。こうした国外へ向けた活動が、後にクリスチャン・ディオールのドレス地制作にも発展します。国内だけでなく、国外デザイナーにも龍村美術織物の品質は認められ、龍村作品はより高い価値をもつ織物となりました。

龍村美術織物の買取相場と高額査定のポイント

中古の着物の場合、買取相場は元値の1〜10%程度が一般的ですが、龍村美術織物の着物や帯は、一般的な着物よりも高額となる傾向にあります。それは、龍村美術織物は織物分野に新たな芸術を確立したことが広く認められ、また数々の功績・作品を生み出したブランドとしても知られており、また、日本のみならず海外でもその品質と価値が評価されているためです。特に初代龍村平蔵の帯は高額で取引されています。
龍村美術織物には着物・帯だけでなく、バッグや茶道具、小物などもあります。これらも同様に価値があり、着物に合わせて誂えたお品物は、着物と同時に査定依頼をすると、単品での査定金額より高くなる場合があります。例えば、龍村美術織物のバッグと帯を合わせて査定すると、単品より査定金額が高くなるということです。

また、中古の着物は、基本的に保存状態が良いと高額査定になる可能性が高くなります。着物は繊細な素材で作られているため、購入後、未着用で保管していたとしても時が経つにつれて、劣化が進行します。そのため、着る機会のない着物や箪笥に眠っている着物も、日ごろのお手入れが大切になります。また、劣化が進行する前に買取を依頼することで、高額買取が期待できます。

龍村美術織物の価値を正しく見極めてもらうためには、着物の買取専門店に査定依頼することをお勧めします。本やゲーム、日用品まで取り扱うリサイクルショップや、インターネットのみで展開している無店舗型の買取サービスや宅配買取では、その価値を見極めきれない場合もあります。特に龍村美術織物のような何代も続く有名作家の作品には専門知識や豊富な査定経験が必要になるため、専門的な視点を有する着物の買取専門店での査定が高額買取に繋がります。

まとめ

「龍村美術織物」は、“美術織物”という新たな芸術分野を確立し、数々の功績・作品を生み出した伝統的な織物ブランドです。その背景には、織物の美しさや独創性、古代織物を研究し、基礎とした復元力などの技術があります。初代龍村平蔵から受け継がれる立体と色彩の織物技術から生まれた、緻密でありながら大胆さも兼ね備えた龍村美術織物は国内だけでなく海外の人々まで魅了し、数々の功績も残しています。
織物の美しさと高い品質を追求した龍村美術織物の作品は、今でも高く評価され、思わぬ高値がつく場合もあります。龍村美術織物の帯や着物をお持ちで着る機会がない方や、ご自宅の箪笥で眠っている作品をお持ちの方は、ぜひ一度、着物の買取専門店へ査定を依頼してみてはいかがでしょうか。

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